防火設備定期検査とは?内容や報告時期、消防設備点検の違いを解説

防火設備定期検査は、労働基準法で定められた法的制度です。

2016年6月から建築基準法が改正されたことによって新設され、防火設備に重点をおいています。

建築物の所有者・管理者は、定期的な検査と報告を実施しなければなりません。

今回はそんな防火設備定期検査の概要から消防設備点検との違い、調査項目や費用、依頼までの流れについて紹介します。

防火設備定期検査とは?

防火設備定期検査とは、建築基準法第12条に定められている定期報告制度のひとつです。

防火扉や防火シャッターなどの防火設備に重点を置いて検査します。

また、定期検査とあるように、建築物の所有者・管理者には、定期的な検査と報告が法的に義務づけられています。

防火設備定期検査の目的

防火設備定期検査の目的は、建物の安全性の確保です。

建築基準法第12条には、防火設備定期検査の他に

  • 「特定建築物定期調査」
  • 「建築設備定期検査」
  • 「昇降機等定期検査」

が定められています。

これらは、どれも不特定多数の人が利用する建築物の老朽化や不備、設備の作動不良などを早期発見し、大事故を未然に防ぐために重要な検査です。

建築基準法では、建築物の安全性を確保するため、資格を持った専門家による定期的な検査、特定行政庁への報告を義務づけています。

防火設備定期検査の成り立ち

防火設備定期検査は、建築基準法の改正により、2016年6月に新設された定期報告制度です。

改正の背景には、防火設備の未設置・不備によって起こった火災事故があります。

具体的には、上記の建築基準法改正前に、

  • 福山市のホテル火災
  • 長崎市のグループホーム火災
  • 福岡市診療所火災

など、死亡者が出る火災事故が相次いでいました。

これらの火災事故を受け、防火設備の管理を強化することを目的に、新たに「防火設備」の定期検査が新設されました。

防火設備定期検査の対象建築物

防火設備定期検査では、特殊建築物のうち、政令で指定された一部が検査報告対象です。

特殊建築物を建築基準法では、以下のように定義しています。

【引用】
学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同様とする。)、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物をいう。

しかし、すべてを建築基準法で定めているわけではありません。

検査報告対象は、特定行政庁によって異なります。

建築基準法では特に重要なものを定め、それ以外は特定行政庁が各地の状況に合わせて定めます。

そのため、検査前に建築物の所有者・管理者は、自身の建物が点検の対象となるか、用途や規模などの条件はどのようなものか、確認が必要です。

防火設備定期検査と消防設備点検の違い

防火設備定期検査と混同されやすい定期検査に「消防設備点検」があります。

それぞれの違いは、以下のとおりです。

 

防火設備定期検査

消防設備点検

検査項目

・防火扉

・防火シャッター

・耐火クロススクリーン

・ドレンチャー

・消火器

・誘導灯

・自動火災報知設備

・屋内消火栓設備

など

検査周期

1年に1回

※特定行政庁によって異なります

機器点検(半年に1回)

総合点検(1年に1回)

検査資格

・1級建築士

・2級建築士

・防火設備検査員

・消防設備士

・電気工事士(電気主任技術者)

・消防設備点検資格者

法的根拠

建築基準法第12条

消防法第17条

 

検査の目的は、どちらも防火設備の維持・管理と、建築物の安全性の確保ですが、上記のように法的根拠や検査項目が異なります。

防火設備定期検査の報告書とは?

防火設備定期検査の定期報告は、検査会社が特定行政庁に報告書を提出することで行います。

報告書には、主に以下を記載します。

  • 建物の管理者・所有者の情報
  • 検査者の情報
  • 設備の検査結果・不具合状況

検査会社は検査を終えると、報告書を作成します。

完成した報告書は所有者・管理者に送付されるので、中身を確認して押印し、すみやかに検査会社に返送しましょう。

なぜなら、報告書は一定期間のうちに提出しなければならないと決まっているからです。

例えば、東京都の場合、検査日から1ヶ月の間に提出しなければなりません。

さらに、検査日から3ヶ月経過すると、報告書は無効となり、再検査を実施しなければなりません。

特定行政庁によって期間は異なるので、検査前に確認してみてください。

また、報告書は、特定行政庁のホームページから所定の様式(フォーマット)でダウンロード可能です。

特に初めて検査を行う所有者・管理者は、検査前に一度確認をおすすめします。

防火設備定期検査の内容・検査項目

防火設備定期検査の検査項目は、以下の4つです。

  1. 防火扉
  2. 防火シャッター
  3. 耐火クロススクリーン
  4. ドレンチャー

それぞれの内容を紹介します。

防火扉

防火扉とは、火災時に閉鎖させ、火災の貫通を防止するための扉です。

具体的には、以下の内容を確認します。

検査箇所

内容

防火扉の周辺

防火扉の周辺に閉鎖の妨げになる物はないか

防火扉の取付状態

扉本体、金具、枠などに錆や損傷がないか

危険防止装置

万が一、防火扉の閉鎖に人が巻き込まれた場合、閉鎖速度や力が一定基準以下となるか

 

防火シャッター

防火シャッターは、火災時に閉鎖することで炎や煙が屋内に広がるのを防ぎ、防火区画を構成する役割があります。

具体的には、以下の内容を確認します。

検査箇所

内容

防火シャッターの周辺

防火シャッターの周辺に閉鎖の妨げになる物はないか

駆動装置

防火シャッターを閉鎖させるためのローラーチェーンやワイヤーロープが正常に駆動するか、損傷等はないか

危険防止装置

万が一、防火シャッターの閉鎖に人が巻き込まれた場合、

降下が自動的に止まるか

連動機能

連動する煙感知器、熱煙複合式感知器の作動は正常か

耐火クロススクリーン

耐火クロススクリーンとは、耐火性のある軽量クロスが天井裏から降下し、防火・防煙区画を形成する防火設備です。

具体的には、以下の内容を確認します。

検査箇所

内容

駆動装置

耐火クロススクリーンを降下させるためのローラーチェーンが正常に駆動するか、損傷等はないか

カーテン部

カーテン部に劣化や損傷はないか

危険防止措置

万が一、耐火クロススクリーンの降下に人が巻き込まれた場合、降下速度や力が一定基準以下になるか

連動機能

連動する煙感知器、熱煙複合式感知器の作動は正常か

ドレンチャー

ドレンチャーとは、屋根や外壁など建物の外側に設置し、散水ヘッドから水を噴射して水幕を張り、建物の延焼を防ぐ防火設備です。

具体的には、以下の内容を確認します。

検査箇所

内容

ドレンチャーの周辺

ドレンチャーの周辺に水の噴射の妨げとなる物はないか

散水ヘッド

散水ヘッドは正常に稼働するか、詰まりや損傷はないか

水源

水源となる貯水槽や給水設備に劣化や損傷はないか

防火設備定期検査の資格者

防火設備定期検査が可能な資格者は、以下のとおりです。

  • 一級建築士
  • 二級建築士
  • 防火設備検査員

防火設備定期検査は、これらの資格を有する検査員が検査を行い、特定行政庁に定期報告を行います。

建築物の所有者・管理者は、資格者が所属している検査会社に依頼して、必ず検査を行いましょう。

また、防火設備検査員は、2016年6月の建築基準法改正によって新設された国家資格です。

防火設備検査員になるには、講習を受講し、合格しなければなりません。

防火設備定期検査員の講習内容

防火設備定期検査員の講習概要・内容は、以下のとおりです。

受講地・開催地

東京、名古屋、大阪、札幌、福岡

※札幌と福岡はWEB受講のみ。

 受講地・開催地は回ごとに変更となる可能性あり。

受講資格

  1. 大学にて指定の学科(※1)を修了し卒業後、実務経験(※2)が2年以上の者
  2. 3年制短期大学にて指定の学科(※1)を修了し卒業後、実務経験(※2)が3年以上の者
  3. 2年制短期大学、高等専門学校にて指定の学科(※1)を修了し卒業後、実務経験(※2)が4年以上の者
  4. 高校、中学校にて指定の学科(※1)を修了し卒業後、実務経験(※2)が7年以上の者
  5. 11年以上の実務経験(※2)を有する者
  6. 建築行政に関して2年以上の実務経験(※2)を有する者
  7. 消防吏員として5年以上の実務経験(火災予防業務に関するもの)を有する者
  8. 感知器に関して消防設備点検資格者として5年以上の実務経験を有する者
  9. 感知器に関して甲種消防設備士または乙種消防設備士として5年以上の実務経験を有する者
  10. 上記と同等以上の知識および経験を有する者

受講内容

■学科講習

・1日目

 ・建築学概論:2時間

 ・防火設備定期検査制度総論:1時間

 ・防火設備に関する建築基準法令:1時間

 ・防火設備概論(防火戸等に関するもの):2時間

・2日目

 ・防火設備概論(連動機構に関するもの):1時間

 ・防火設備に関する維持保全:1時間

 ・防火設備定期検査業務基準:2時間

 ・修了考査 四肢択一式 22問:1時間30分


■実技講習

防火設備検査方法:3時間

・防火設備の点検

・連動盤からの直接起動と手動起動

・報告書作成

受講料

■学科講習:33,000円(税込)

■実技講習:27,500円(税込)

合格基準

学科講習を受講し修了考査に合格した者で、かつ実技講習の受講を修了した者。

※修了考査の合格基準は、17問以上/22問(72.3%)の得点。

 

防火設備定期検査の報告時期は?

防火設備定期検査の周期は、特定行政庁によって異なりますが、1年に1度のケースがほとんどです。

報告時期は特定行政庁によって定められているので、毎年の報告時期に忘れず報告しましょう。

また、報告時期と周期は、特定行政庁によって異なるので、検査前に確認すると良いでしょう。

防火設備定期検査の費用相場

防火設備定期検査の費用相場は、以下のとおりです。

延べ床面積

共同住宅(マンション)

その他

〜1,000㎡

35,000円

35,000円

1,000㎡〜2,000㎡

35,000円

40,000円

2,000㎡〜3,000㎡

40,000円

45,000円

 

また、検査ごとの費用相場は、以下のとおりです。

規格・仕様

単位

金額

防火扉

1,500円〜2,500円

防火シャッター

4,000円〜8,000円

耐火クロススクリーン

4,000円〜8,000円

煙感知器・熱感知器

  100円〜200円

検査会社によって費用は異なるので、あくまで一つの基準として参考程度にお考えください。

防火設備定期検査の流れ

防火設備定期検査の流れは、以下のとおりです。

  • 検査通知書が届く
  • 検査会社を選ぶ
  • 検査会社に書類を提出する
  • 検査を行う
  • 報告書を作成・提出する

ひとつずつみていきましょう。

検査通知書が届く

防火設備定期検査の時期が来ると、建物の所有者・所有者の元へ特定行政庁から検査通知書が届きます。

無視せずに検査の準備を始めましょう。

注意点として、特定行政庁によっては、通知書が届かない場合があります。

通知書が届かなくても報告義務がなくなったわけではありません。

検査時期をしっかりと把握し、漏れなく検査を行いましょう。

検査会社を選ぶ

検査通知書が届いたら、依頼する検査会社を選びましょう。

検査が初めてで、検査会社の選び方がわからない方は、以下のポイントを押さえておくと良いでしょう。

  • 経験と実績のある会社を選ぶ
  • 社歴が長く、従業員数が多い会社を選ぶ
  • 複数社から見積もりを取る

特に重要なのは、複数社から見積もりの見積もり取得です。

複数社から見積もりを取ることで、費用相場やサービス内容など、その会社の特徴を知ることができ、今後の参考になります。

検査会社に書類を提出する

検査会社が決まったら、次に検査会社に書類を提出しましょう。

検査が初回の場合、以下の書類が必要となります。

  • 確認済証
  • 検査済証
  • 建築平面図
  • 設備図面
  • 面積記載図
  • 消防設備点検報告書

また、2回目以降の検査の場合は、一度報告書を特定行政庁に提出している状態なので、用意するのは以下の書類だけで問題ありません。

  • 前回の報告書
  • 建築平面図
  • 消防設備点検報告書

書類に関してわからないことがあれば、依頼会社に確認すれば教えてもらえるので、虚偽の書類提出や漏れがないように、遠慮なく確認すると良いでしょう。

検査を行う

書類の提出が終わったら、依頼した検査会社によって検査が始まります。

建物の所有者・管理者が行うことはありませんが、検査会社から設備に関する確認の連絡が入ることがあるので、その時には事実を伝えましょう。

虚偽の報告書の提出は、罰則が課せられる可能性があります。

報告書を作成・提出する

検査が終わったら、検査会社が報告書を作成します。

完成した報告書は所有者・管理者に送られるので、無効にならないように中身を確認して押印し、すみやかに検査会社に返送しましょう。

防火設備定期検査を怠った場合の罰則は?

防火設備定期検査を怠った場合、罰則を課せられる可能性があります。

罰則について、建築基準法第101条に以下のように記載されています。

【引用】
第101条 「次の各号のいずれかに該当する者は、100万円以下の罰金に処する」二項第12条第1項又は第3項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

前述のとおり、必ずしも検査通知書が届くわけではありません。

事前に自身の建物の検査時期・周期を把握しておき、漏れなく行いましょう。

防火設備定期検査のまとめ

防火設備定期検査を実施することで、火災が起こっても設備が正常に作動し、人命を守れます。

一方で、検査を怠ってしまうと、本記事で紹介したような大事故を招いてしまう恐れがあります。

そのような事態を未然に防ぐためにも、所有者・管理者は必ず防火設備定期調検査を実施しましょう。

検査をご希望の方は、プロフェッショナルである「ヒロ総合メンテナンス合同会社」にぜひご相談ください。

お困りごとやご不明な点がある方も、お気軽にご連絡ください。

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