12条点検とは?定期報告や費用、資格を解説

12条点検は、労働基準法第12条によって定められている建物の定期検査・報告制度です。

建物の安全性の確保を目的とした制度であり、建築物の所有者・管理者に義務づけられています。

今回はそんな12条点検の概要から検査項目の内容、費用や周期、依頼までの流れについて紹介します。

12条点検とは?

12条点検とは、建築基準法第12条に定められた、建築物の安全性の確保を目的とした制度です。

建築物の所有者・管理者に義務づけられた制度で、建築物とその建築物に備わっている整備の定期的な検査と報告書の提出が求められています。

建築基準法に基づいた建物の定期検査

建築基準法第12条には、以下の4項目の定期検査・報告が定められています。

  • 特定建築物
  • 建築設備
  • 防火設備
  • 昇降機等

具体的には、12条1項で特定建築物定期調査、12条3項で建築設備定期検査・防火設備定期検査・昇降機等定期検査が定められています。

建築物の所有者・管理者は、これらの項目に関して定期的に点検を実施し、その結果を特定行政庁へ報告しなければなりません。

12条点検の定期報告とは?

12条点検の定期報告は、検査会社が検査後、特定行政庁に報告書を提出します。

報告書には、主に以下を記載します。

  • 建物の管理者・所有者の情報
  • 検査者の情報
  • 建物・設備の検査結果・不具合状況

検査会社は検査を終えると、およそ1週間程で報告書を作成します。

完成した報告書は所有者・管理者に送付されるので、中身を確認して押印し、すみやかに検査会社に返送しましょう。

報告書は一定期間のうちに提出しなければならないと決まっています。

例えば、東京都の場合、検査日から特定建築物なら3か月、防火設備・建築設備及び昇降機なら1ヶ月の間に提出しなければなりません。

特定行政庁によって期間は異なるので、検査前に確認してみてください。

また、報告書は、特定行政庁のホームページから所定の様式(フォーマット)でダウンロード可能です。

特に初めて検査を行う所有者・管理者は、検査前に一度確認をおすすめします。

12条点検の検査報告対象

12条点検では、特殊建築物が検査報告対象となります。

特殊建築物を建築基準法では、以下のように定義しています。

【引用】
学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同様とする。)、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物をいう。

しかし、検査報告対象は、都道府県、特定行政庁によって異なります。

そのため、建築物の所有者・管理者は、自身の建物が点検の対象となるか、用途や規模などの条件はどのようなものか、確認が必要です。

12条点検の検査項目

12条点検に該当する以下の4つの検査の検査項目を紹介します。

  1. 特定建築物定期調査
  2. 建築設備定期検査
  3. 防火設備定期検査
  4. 昇降機等定期検査

それぞれみていきましょう。

特定建築物定期調査の検査項目

特定建築物定期調査の検査項目と内容は、以下のとおりです。

検査項目

検査場所

内容

敷地・地盤

地盤、擁壁、排水管など

・地盤沈下、傾きがないか

・擁壁に傾き、ひび割れがないか

・排水管の詰り、悪臭はないか    など

建物内部

内壁、床、天井などの建物内部全般

・内壁、床、天井等に著しい割れやずれ、錆、損傷がないか

・採光の妨げとなるものが放置されていないか

・換気設備は作動しているか     など

屋上・屋根

屋上、屋上周りの設備、屋根

・屋上にひび割れ、反り上がりなどないか、歩行上の危険はないか

・屋上周りに著しいひび割れ、剥落がないか

・屋根ふき材に割れがないか     など

建物外部

外壁、建物の土台、窓サッシなど

・外壁が崩れていたり、鋼材に著し錆、腐食がないか

地盤沈下により土台にひび割れがないか

・窓サッシが変形していないか

避難施設・非常用進入口

避難経路、非常用進入口、排煙設備など

・避難の支障になる物が放置されていないか

・手すりに著しい錆、腐食がないか

・排煙設備が正常に作動するか

その他

地下街、特殊構造、避雷設備、煙突、自動回転ドアなど

・特定の建物に備わっている施設・設備に異常がないか

 

建築設備定期検査の検査項目

建築設備定期検査の検査項目と内容は、以下のとおりです。

検査項目

検査場所

内容

給排水設備

受水槽、高架水槽、加圧給水配管、汚水槽、排水管など

・設置場所は適正か

・腐食や漏れはないか

・運転に異常はないか

換気設備

無窓居室、火気使用室、居室等、防火ダンパー

・設置場所は適正か

・運転に異常はないか

・換気量の測定

・ダクトの詰まり、フィルターの故障はないか

など

非常照明装置

蓄電池、器具、光源、点灯形態

・各装置の設置場所は適正か

・停電時に正常に動作するか

・十分な明るさが確保できているか

・装置の周りに障害物はないか

・配線状況は適正か

・充電状況

排煙設備

自動排煙設備、機械排煙設備

・問題なく開閉するか

・設置場所は適正か

・錆や腐食はないか

・周辺に開閉の妨げとなる障害物はないか

・排気風量は適正か

など

防火設備定期検査の検査項目

防火設備定期検査の検査項目と内容は、以下のとおりです。

検査項目

内容

防火扉

・問題なく開閉するか

・周辺に開閉の妨げとなる障害物はないか

・枠や金具に錆や損傷はないか

・危険防止装置が正常に作動するか

防火シャッター

・運転に異常はないか

・周辺に開閉の妨げとなる障害物はないか

・危険防止装置が正常に作動するか

耐火クロススクリーン

・運転に異常はないか

・カーテン部に劣化、損傷はないか

・危険防止装置が正常に稼働するか

ドレンチャー

・運転に異常はないか

・散水ヘッドが正常に作動するか

・水源の貯水槽や給水設備に劣化や損傷はないか

 

昇降機等定期検査の検査項目

昇降機等定期検査の検査項目と内容は、以下のとおりです。

検査項目

内容

エレベーター

・制御器は正常に作動するか

・階床選択機、巻上げ機、ブレーキなどは正常に作動するか

・速度は適切か

・降下防止装置の設置や作動に問題はないか

・かごの設置、構造、ドア、操作盤、操縦機などに問題はない

など

エスカレーター

小荷物専用昇降機

遊戯施設等

 

12条点検の周期は?

12条点検の周期は、以下のとおりです。

項目

周期

備考

建築物

3年以内ごと

新築などの検査済証の交付を受けた建物は、最初の点検は6年以内に実施。

建築設備

1年以内ごと

新築などの検査済証の交付を受けた建物は、最初の点検は2年以内に実施。

防火設備

昇降機等

注意点として、12条点検の周期は、特定行政庁によって異なります。

上記ケースがほとんどですが、所有者・管理者は、点検前に特定行政庁に確認しましょう。

12条点検の資格者

12条点検の各点検の検査が可能な資格者は、以下のとおりです。

  • 一級建築士
  • 二級建築士
  • 検査資格者(特定建築物調査員、建築設備検査員、防火設備検査、昇降機等検査員)

12条点検は、専門的な技術と知識をもつ一級建築士、二級建築士、講習を受講した検査資格者のみが行えます。

一級建築士と二級建築士は、講習の受講は不要で、特定建築物調査、建築設備検査、防火設備検査、昇降機等検査の検査が可能です。

一方で、検査資格者は、それぞれの調査の講習を受講・合格した方しか検査を行えません。

例えば、特定建築物調査員であっても、建築設備検査員でなければ建築設備検査は行えないので、注意しましょう。

12条点検の費用相場

12条点検の費用相場は、以下の表のとおりです。

延べ床面積

特定建築物定期調査

建築設備定期検査

共同住宅
(マンション)

その他

共同住宅
(マンション)

その他

〜1,000㎡

35,000円

55,000円

30,000円

30,000円

1,000㎡〜2,000㎡

45,000円

70,000円

30,000円

35,000円

2,000㎡〜3,000㎡

55,000円

80,000円

35,000円

40,000円

12条点検は、建設会社や設計会社、管理会社など、いろいろな業態の会社が行うため、費用は異なります。

上記はひとつの基準として、参考にしてください。

12条点検の流れ

12条点検の流れは、以下のとおりです。

  • 検査通知書が届く
  • 検査会社を選ぶ
  • 検査会社に書類を提出する
  • 検査を行う
  • 報告書を作成・提出する

ひとつずつ解説します。

検査通知書が届く

12条点検の検査時期が来ると、建築物を管轄する特定行政庁から、建物の所有者または管理者あてに検査通知書が届きます。

通知書を無視して検査を行わないと、場合によっては罰則を課せられる可能性があるので、必ず実施しましょう。

また、注意点として、特定行政庁によっては通知書が届かない場合があります。

通知書が届かなくても報告義務はあります。

検査時期をしっかりと把握しておき、実施しましょう。

検査会社を選ぶ

検査通知書が届いたら、12条点検を依頼する会社を選びましょう。

12条点検が初めてで、検査会社の選び方がわからない方は、以下のポイントで検査会社の選択をおすすめします。

  • 経験と実績のある会社を選ぶ
  • 社歴が長く、従業員数が多い会社を選ぶ
  • 複数社から見積もりを取る

特に重要なのが、複数社からの見積もり取得です。

複数社から見積もりを取ることで、費用相場やサービス内容など、その会社の特徴を知ることができ、今後の参考になります。

検査会社に書類を提出する

検査会社が決まったら、次に書類を準備して提出しましょう。

書類は、検査会社が検査・報告書を作成するために必要なので、漏れなく準備しましょう。

検査が初回の場合、以下の書類が必要です。

  • 確認済証
  • 検査済証
  • 建築平面図
  • 設備図面
  • 面積記載図

また、2回目以降の検査の場合、一度特定行政庁に報告書を提出済なので、以下の書類のみで問題ありません。

  • 前回報告書
  • 平面図

書類に関してわからないことがあれば、依頼会社に確認すれば教えてもらえるので、虚偽の書類提出や漏れがないように、遠慮なく確認すると良いでしょう。

検査を行う

書類の提出が終わったら、依頼した検査会社によって検査が始まります。

建物の所有者・管理者が行うことはありませんが、検査会社から設備に関する確認の連絡が入ることがあるので、その時には事実を伝えましょう。

虚偽の報告書の提出は、罰則が課せられる可能性があります。

報告書を作成・提出する

検査が終わったら、検査会社が報告書を作成します。

完成した報告書は所有者・管理者に送られるので、無効にならないように中身を確認して押印し、すみやかに検査会社に返送しましょう。

12条点検を怠った場合の罰則

12条点検を怠った場合、100万円以下の罰金が課せられる可能性があります。

12条点検は、法的に建物の所有者・管理者に課せられた義務です。

検査通知書が届かなくても点検義務が免除されたわけではないので、所有者・管理者は自身で管理する意識を常に持っておくことが大切です。

12条点検のまとめ

12条点検を実施することで、建物や設備に不具合があっても早期に発見・対応が可能です。災害時など万が一の時でも、建物そのものはもちろん、利用者の安全を守れます。

一方で、検査を怠ってしまうと、人命に関わる大事故を招く恐れがあります。

そのような事態を未然に防ぐためにも、所有者・管理者は必ず12条点検を実施しましょう。

検査をご希望の方は、プロフェッショナルである「ヒロ総合メンテナンス合同会社」にぜひご相談ください。

お困りごとやご不明な点がある方も、お気軽にご連絡ください。

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