非常用照明の設置基準は?建築基準法の内容も解説

非常用照明は、建築基準法によって定められた、非常時に予備電源によって点灯する照明器具です。

建築基準法では、非常用照明の定義や設置基準、定期報告制度について定められています。

そのため、対象建築物の所有者・管理者には、定期的な点検と報告が義務付けられています。

今回は非常用照明の概要から設置基準について紹介します。

非常用照明とは?

非常用照明とは、地震や火災などの災害・事故で停電した際に、予備電源によって点灯する照明器具です。

非常用照明は、建築基準法によって、不特定多数の人が利用する商業施設をはじめとした特定建築物への設置義務が定められています。

加えて、建築基準法第12条に定められた定期報告制度の検査項目のひとつです。

そのため、非常用照明の設置が義務付けられた建築物の管理者・所有者には、非常用照明が緊急時に正しく作動するように、有資格者に依頼し、定期的な検査の実施が義務づけられています。

非常用照明の種類

非常用照明には、光源や点灯形態、蓄電池によってさまざまな種類に分類されます。

それぞれコストや特徴、設置場所が異なるため、漏れなく点検や交換ができるように、建築物の管理者・所有者は把握しておきましょう。

光源の種類

光源は、蛍光灯・白熱灯・LEDの3種類に分けられます。

蛍光灯

棒状のタイプが一般的。広く普及しているため安価。照らせる範囲が広く、教室やオフィスなどで採用されている。

白熱灯

自然な暖かい光が特徴。比較的安価ではあるが寿命が短め。

LED

蛍光灯や白熱灯と比べて効果ではあるが寿命が長い。省エネ効果もあることから、家庭から商業施設まで広く採用されている。

 

点灯形態の種類

点灯形態の種類は、専用型・組み込み型・併用型の3種類に分けられます。

専用型

光源は一つ。平常時は消灯しており、非常時のみ点灯する。

組み込み型

光源は平常時用と非常時用のふたつ。停電時は非常用が点灯する。

併用型

光源は一つ。平常時は通常電源で点灯する。停電時は非常用に自動で切り替わる。

 

蓄電池の種類

蓄電池は、電源内蔵型と電源別置型の2種類に分けられます。

電源内蔵型

バッテリーが照明に内蔵されている。非常時に配線が切れても、内蔵されたバッテリーで点灯する。

電源別置型

バッテリーが照明とは別になっている。停電時には自動で予備電源に切り替わる。

 

非常用照明に求められる構造・適合

非常用照明には、建築基準法で定められた構造を満たすか、JIL適合品であることが求められます。

具体的に建築基準法では、非常用照明は以下のいずれかに定める構造としなければならないとしています。

  • 照明は、直接照明とし、床面において一ルクス以上の照度を確保することができるものとすること。
  • 照明器具の構造は、火災時において温度が上昇した場合であつても著しく光度が低下しないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとすること。
  • 予備電源を設けること。
  • 上記3つに定めるもののほか、非常の場合の照明を確保するために必要があるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとすること

上記の内容は、建築基準法第126条の5に定められています。

また、日本照明工業会が評定したJIL適合品の製品であれば、非常用照明として認められます。

JIL適合品には、JIL適合マークが貼られているので覚えておきましょう。

非常用照明の設置基準

非常用照明の設置基準は、建築物の規模によって異なります。

非常用照明の設置義務がある建築物と、不要な建築物について具体的に解説します。

非常用照明の設置義務がある建築物

以下に該当する建築物は、非常用照明の設置義務があります。

  • 特殊建築物
  • 階数が3階以上でなおかつ延べ面積が500㎡を超える建築物
  • 延べ面積が1,000㎡を超える建築物
  • 窓やその他の開口部を有しない建築物

具体的には、建築基準法第126条の4に記載されています。

また、ここで指す特殊建築物とは、具体的に以下の用途に供する建築物のことです。

  • 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場
  • 病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る)ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎、児童福祉施設等
  • 学校等、博物館、美術館、図書館
  • 百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店物品販売業を営む店舗(床面積10m²以内のものを除く)

非常用照明の設置が不要な建築物

一方で、以下の建築物には、非常用照明の設置が義務付けられていません。

  • 一戸建ての住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸
  • 病院の病室、下宿の宿泊室又は寄宿舎の寝室その他これらに類する居室
  • 学校等
  • 避難階又は避難階の直上階若しくは直下階の居室で避難上支障がないものその他これらに類するものとして国土交通大臣が定めるもの

こちらについても、建築基準法第126条の4に記載されているので、あわせてご確認ください。

非常用照明と消防法の関係

非常用照明は、建築基準法だけでなく、消防法においても設置・点検義務が定められています。

消防法とは、火災の予防と、火災による被害を最小限に抑えることを目的とした法律です。

防火の対象にあたる建築物の管理者・所有者は、消防法に従って誘導灯を設置し、定期的な点検ならびに所轄の消防署への報告を行わなければなりません。

誘導灯の基準等は、消防法第26条をご確認ください。

非常用照明のまとめ

非常用照明は、火災や事故などの非常時に正常に点灯することで、建築物の利用者が安全に避難できます。

一方で、非常時に点灯しないと、多くの被害者を出してしまう恐れがあります。

そのため、建築物の所有者・管理者は、法律に従って非常用照明の設置と有資格者による定期的な点検を実施しなければなりません。

検査をご希望の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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