特殊建築物は、建築基準法第2条1項第二号によって定義されています。
定義された特殊建築物のうち、政令と特定行政庁が定めた条件を満たす場合、特殊建築物の管理者および所有者は、調査資格を有した専門家による調査と定期的な報告が必要です。
今回は、特殊建築物(特定建築物)定期調査の対象を解説します。
特殊建築物(特定建築物)定期調査の対象かわからない方や、特殊建築物(特定建築物)定期調査の対象条件を把握しておきたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
建築基準法改正(平成28年6月)の概要
建築基準法は、建築物における事故・災害対策の徹底や、建築関連手続きの合理化などを目的に、平成28年6月に改正されました。
平成28年6月の改正によって、避難上の安全確保等の観点から、以下の内容を国が政令で定め、報告の対象に加えました。
- 不特定多数の者が利用する建築物及びこれらの建築物に設けられた防火設備
- 高齢者等の自力避難困難者が就寝用途で利用する施設及びこれらの施設に設けられた防火設備
- エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機
また、平成28年6月の改正によって、定期調査が行われる建築物は「特定建築物」と名称が統一されたのもポイントです。
そのため、厳密には「特殊建築物定期調査」という調査はなく「特定建築物定期調査」が正規の名称です。
特殊建築物定期調査の対象は?マンションは対象?
まず、特殊建築物は、建築基準法第2条1項第二号によって、以下のように定義されています。
学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同様とする。)、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物をいう。
引用:建築基準法
上記の建築物において、政令と特定行政庁が定めた規模や階数の条件を満たす場合、その建築物は特定建築物となり、定期報告の対象となります。
そして、特殊建築物(特定建築物)定期調査の対象は、建築基準法で以下のように定められています。
- 第6条第1項第一号に掲げる建築物で安全上、防火上又は衛生上特に重要であるものとして政令で定めるもの
- 政令で定めるもの以外の特定建築物で特定行政庁が指定するもの
政令で指定する建築物は、以下のとおりです。
特定の用途で床面積が200㎡の建築物が該当します。
建物・施設 |
規模 |
劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場など |
・3階以上の階にあるもの ・客席の床面積が200㎡以上のもの ・地階にあるもの ・主階が1階にない劇場、映画館、演芸場 |
病院、有床診療所、ホテル、旅館、就寝用福祉施設 |
・3階以上の階にあるもの ・2階の床面積が300㎡以上のもの ・地階にあるもの |
体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツ練習場 |
・3階以上の階にあるもの ・床面積が2,000㎡以上のもの |
百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店公衆浴場、待合、料理店、飲食店、物品販売業を営む店舗 |
・3階以上の階にあるもの ・2階の床面積が500㎡以上のもの ・床面積が3,000㎡以上のもの ・地階にあるもの |
倉庫その他これに類するもので政令で定めるもの |
・200㎡以上のもの |
また、「特定行政庁が指定する建築物」は、特定行政庁によって内容が異なります。
そのため、建築物の管理者・保有者は、管轄の特定行政庁で対象条件の確認が必要です。
特殊建築物定期調査の対象外の建築物
特殊建築物(特定建築物)定期調査の対象外の建築物には、主に以下があります。
- 住宅
- 警察署
- 神社・教会
上記の建築物は、特殊建築物や政令が定める特定建築物に該当しないため、調査対象外です。
ただし、建築基準法に対象建築物として明記がない建築物でも、特定行政庁によっては調査対象としている場合があります。
そのため、各特定行政庁への問い合わせをおすすめします。
特殊建築物定期調査の対象条件【東京都の場合】
特殊建築物(特定建築物)定期調査の対象条件は、特定行政庁によって異なります。
今回は、東京都を例に紹介します。
東京都の特殊建築物(特定建築物)定期調査の対象条件は、東京都都市整備局「定期報告対象建築物・建築設備等及び報告時期一覧」から確認可能です。
具体的には、以下のとおりです。
建物・施設 |
規模 |
劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場 |
・3階以上の階にあるもの ・客席の床面積が200㎡以上のもの ・地階にあるもの ・主階が1階にない劇場、映画館、演芸場 |
旅館、ホテル |
・3階以上の階にあるもの ・床面積が200㎡以上のもの |
百貨店、マーケット、勝馬投票券発売所、 場外車券売場、物品販売業を営む店舗 |
・3階以上の階にあるもの ・床面積が3,000㎡以上のもの |
地下街 |
・床面積が1,500㎡以上のもの |
病院、有床診療所、ホテル、旅館、就寝用福祉施設 |
・3階以上の階にあるもの ・2階の床面積が300㎡以上のもの ・地階にあるもの |
学校、学校に附属する体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツ練習場 |
・3階以上の階にあるもの ・床面積が2,000㎡以上のもの |
下宿、共同住宅又は寄宿舎の用途とこの表(事務所等を除く)に掲げられている用途の複合建築物 |
・5階以上の階にあるもの ・床面積が1,000㎡以上のもの |
百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店公衆浴場、待合、料理店、飲食店、物品販売業を営む店舗 |
・3階以上の階にあるもの ・2階の床面積が500㎡以上のもの ・床面積が3,000㎡以上のもの ・地階にあるもの |
事務所その他これに類するもの |
5階建て以上で、延べ面積が 2000㎡を超える建築物のうち3階以上の階にある延べ面積が1000㎡のもの |
高齢者、障害者等の就寝の用に供する共同住宅又は寄宿舎 |
・3階以上の階にあるもの ・2階の床面積が300㎡以上のもの ・地階にあるもの |
東京都では、政令が指定する対象条件以外に、複数の条件が加わっています。
このように、特定行政庁によって特殊建築物(特定建築物)定期調査の対象条件は異なります。
建築物の管理者および所有者は、管轄の特定行政庁に対象条件を確認しましょう。
防火設備定期検査の対象条件
防火設備定期検査は、特殊建築物(特定建築物)定期調査と同様に、建築基準法の改正により、平成28年6月に新設された定期報告制度です。
防火設備検査についても、東京都を例に紹介します。
東京都は、特定建築物定期調査報告の対象となる建築物及び病院・診療所や高齢者・障害者等の就寝の用に供する用途が200㎡以上の建築物に設けられた防火設備のうち、随時閉鎖又は作動をできるもの(防火ダンパーを除く。)を、防火設備検査の対象としています。
防火設備定期検査については「防火設備定期検査とは?内容や報告時期、消防設備点検の違いを解説」で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
建築設備定期検査の対象条件
建築設備定期検査も、平成28年6月に新設された定期報告制度です。
東京都は、特定建築物定期調査報告の対象となる建築物に設置された建築設備を、建築設備検査の対象としています。
建築設備検査では、給排水設備・換気設備・非常照明装置・排煙設備の4つの設備を検査します。
詳しくは「建築設備定期検査とは?特定建築物定期調査との違いや費用、周期を解説」で解説しているので、あわせてご確認ください。
昇降機等定期検査の対象条件
昇降機等定期検査も、平成28年6月の建築基準法改正を機に新設された定期報告制度です。
東京都は、特定建築物定期調査報告の対象となる建築物に設置された昇降機等を、昇降機等定期検査の対象としています。
昇降機等定期検査では、エレベーターやエスカレーターなどの昇降機を検査します。
詳しくは「エレベーター定期検査とは?保守点検との違いや検査項目、報告済証を解説」で解説しているので、ぜひご確認ください。
特殊建築物定期調査の対象まとめ
特殊建築物(特定建築物)定期調査は、建築物の管理者および所有者に義務付けられた報告制度のひとつです。
定期検査を怠ると、建築物に劣化や損傷があっても気づかず、大事故を招いてしまう恐れがあります。
そのような事態を未然に防ぐためにも、建築物の管理者・所有者は、定期調査の対象を漏れなく把握し、定期的な検査と報告を実施しましょう。
ご希望の方は、プロフェッショナルである「ヒロ総合メンテナンス合同会社」にぜひご相談ください。
お困りごとやご不明な点がある方も、お気軽にご連絡ください。